路地裏

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メッシはどこへ行く?

 リオネル・メッシは、2004年にデビューしてから、常に青とえんじ色のユニフォームを纏ってきた。時折母国の白と水色に袖を通す事はあれど、他のクラブのユニフォームを着てプレーするメッシは見ることが無かった。

 

 そんなメッシが、バルセロナに退団の意思を伝えたというのだから、サッカー界は連日大騒ぎだ。様々な情報が飛び交い、多くのレジェンドや記者が思い思いにメッシの決断の理由を語り、これからを予測している。だからそれに乗っかって、真剣にメッシの行き先を考えようと思う。

 

 メッシの移籍先候補として多く挙がるのは4つ。マンチェスター・シティパリ・サンジェルマンインテル・ミラノ、そしてニューウェルス・オールドボーイズ。また有力とは言えないがユナイテッドやバイエルンといったクラブも可能性を探っている。

 ニューウェルスを除いたクラブに共通するのが、7100万ユーロと言われるメッシの年俸を負担できる資金力だ。シティとパリは言わずもがな、インテル、ユナイテッド、バイエルンの3クラブもカネを大きな問題としない資金力を持っている。

 

 このうち最有力と見られているのがシティ。恩師ジョゼップ・グアルディオラの存在、同胞の親友アグエロ、CL優勝を目指し改革を惜しまないクラブの姿勢……。すべてが今のバルセロナにはない魅力だ。また何年も前からメッシにラブコールを送り続けてもいる。そして何よりもやはりペップの存在は大きいだろう。

 そもそもメッシが退団を希望したのは初めてだが、移籍の噂自体は初めてではない。それが流れ始めたのは、ペップがバイエルンに就任した頃からだ。ライカールトに抜擢されたメッシがその後世界最高になったのは、ペップの手腕に拠るところも大きい。メッシはそのことを深く感謝しているし、勝負のためなら功労者さえも切るその非情さを評価もしている。暗黒期のバルサを救ったロナウジーニョを放出した判断が無ければ、メッシの成長は鈍化していたかもしれない。

 また、アグエロが自信のアカウントの「ナンバー10」を消したというのも理由の一つになるだろう。シティが出したオファーは、「金銭+ガブリエウ・ジェズス+エリック・ガルシア+アンヘリーニョ」というもの。スアレスの後釜、ウンティティの後釜、ジュニオル・フィルポが期待外れの左SBと、バルサの戦力補強にもなりうるこのオファーは悪くない。問題はキャッシュの金額で、バルサは最低ラインとして2億2200万ユーロ、つまり「史上最高」を求めている。契約解除金が7億ユーロであることを考えれば相当安いとも言えるが、コロナによる収入減とファイナンシャル・フェアプレーを考えるとどんなクラブにも容易に出せる金額ではない。

 メッシが現在主張するのが、「6月までに一方的に契約を解除し退団できる」という契約が、コロナによる特殊なシーズンのため現在も有効であるというもの。これが通ればフリーで移籍できることになるが、クラブは徹底して認めない構えなので、泥沼の法廷闘争となる可能性も十分ある。もしこれがメッシの勝利となれば、シティの可能性はますます高くなるだろう。

 

 パリSGカタール王族に買われたその時から、メッシの獲得を夢見てきた。イブラ、ネイマールという「3番手」で妥協してきたとはいえ、獲れるチャンスがあるなら当然全力で取りに行くだろう。だがここでも壁となるのはFFPだ。ネイマールとエムバペのダブル獲りで重大な負担を抱えているパリは、年俸面から言ってもメッシをスカッドに加えるのはキツすぎる。ネイマールがエースとしてバルサに舞い戻ったり、エムバペがマドリーに旅立ったりすれば状況は変わるが、パリにそれを認める考えは現在無い。CL優勝を来年こそはと、燃え滾っている。したがってメッシの獲得があったとしても今年ではない、というのが大方の見解だ。

 

 ある識者は、インテルへの移籍を「キャリアの後退」と断じた。確かにCLベスト4常連のバルサからユーべを阻めずセリエAで2位、ELも逃したインテルへの移籍は「都落ち」と言えるかもしれない。だが数年前の低迷期とは打って変わり、現在のインテルは資金力のあるオーナーの元でかつての姿を取り戻そうとしている。

 現代でペップ、クロップ、モウリーニョらと並ぶ名将に数えられるコンテの下、イタリア史上唯一の3冠を再びインテルにもたらすというプロジェクトは、十分魅力的と言えるだろう。ただそのコンテが上層部と衝突し、退任を示唆しているという問題もあるが。

 インテルはしばらく悩まされていたカネの問題を克服している。それどころかユベントスと並ぶセリエAトップの金持ちだ。だからこそシュクリニアルやハンダノビッチを残しながら、コンテの要望に応えてルカクエリクセン、モーゼスにヤングといった一線級を次々獲得できたのだ。その一方でイカルディを売り払い、ペリシッチバイエルンに貸し出すなど戦力の「売り」にも余念がない。「メッシVSクリスティアーノ・ロナウド」が、セリエAで再び見られるようになることを、インテリスタは期待している。

 

 ニューウェルス・オールドボーイズとは、アルゼンチンのクラブだ。規模で言えばボカを始めとしたビッグクラブに及ばないこのクラブがなぜ候補に上がるのかというと、メッシがバルサに入団する前に所属していた「心のクラブ」だからである。元々メッシはキャリアの晩年をこの故郷で過ごして引退したいという考えを持っており、この退団でそれが早まるという可能性が出てきた、ということだ。いくら上層部に不信感を持っていても、メッシのバルサ愛は相当なもの。敵として戦うことがまずない母国のクラブに帰る可能性もあるということだ。

 ただ、これはほぼありえないというのが大方の結論。移籍金が発生しないとしても、7100万ユーロの年俸を払えるわけはないし、欧州に比べると明らかにレベルが落ちる。さらにメッシはスペインに家があり、子供も大きくないので、ヨーロッパから出ていくのは早すぎるし望ましくない、というのがその理由だ。あと5年もすれば状況は変わっているだろうが、これも今年は少なくともありえないだろう。

 

 ユナイテッドやバイエルンは、メッシとの直接の繋がりが少ない。資金力やクラブの格で言えば上の候補に勝るとも劣らないが、バイエルンの陣容にはスキが無く、ユナイテッドはポグバという主役をすでに持っている。チャンスがあればわからないが、コロナ禍で寂しい懐を圧迫させてまで獲りに行くかは怪しい。もちろんこれも、メッシがフリーとなれば話は変わってくるのだが。

 

 まとめると、シティ40%、パリ10%、インテル15%、ニューウェルス5%、その他15%、そして残留も15%といったところか。やはり恩師がいて同胞がいて資金力もあるシティは他の候補に比べポジティブな要素が多い。とはいえ多くの人がロナウドのユーベ移籍を予想してなかったように、「移籍市場は何が起こるかわからない」というのは周知の事実。今はまだ見守る時だろう。

 移籍すれば、また1つサッカー界の歴史となる。サッカー界最高の男がどうなるか、楽しみである。