路地裏

あらゆるどうでもいいことを書きます。

セリエAのスクデット争いを展望する

 今季もっとも優勝争いが面白いリーグはどこだろう。バルサとレアルの2強がいずれも問題を抱えるリーガか、野戦病院と化しながら勝ち続けるリバプールモウリーニョの下で戦う集団となったトッテナムがデッドヒートを繰り広げるプレミアか。あるいはパリが(首位とはいえ)ふがいないリーグ・アンバイエルンが昨季ほど無双状態ではないブンデスリーガも面白いかもしれない。

 

 しかし個人的には、セリエAだと思う。プレミア以上に戦力が拮抗している印象で、なによりも現在9連覇中の絶対王者ユベントスにそこまでの勢いが感じられない。

 知っての通り、ユーべはCLの敗退でサッリ監督を解任。U-23監督として経験を積ませるつもりだったピルロを内部昇格させ、いきなりトップチームの指揮を任せている。そのピルロはここまで3位とまずまずの結果を出しているが、やはり戦力を考えると物足りなさはある。ということで、現在6位までのミランインテル、ユーべ、ローマ、ナポリサッスオーロの優勝の可能性を見ていきたい。

 

 ミランの大躍進は、2020下半期のヨーロッパサッカー界でも最大級のトピックだ。昨シーズン途中までは混迷のただ中にあり、全権監督としてラルフ・ラングニックを招聘すると言われていたクラブは、冬のマーケットでイブラヒモビッチを獲得。するとこの大ベテランはチームに活力を与え、またピオーリ監督の卓越した手腕もあって連勝でシーズン終了。これを評価したクラブはピオーリ&イブラの契約を延長し、ラングニック招聘を見送った。

 そして迎えた今シーズン、チームは前述の通り大躍進。12試合を終え8勝4分無敗と、圧巻の成績を残している。

 個人に目を向けると、やはりチームの絶対的な柱はイブラヒモビッチ。39歳という年齢もあってフル稼働とはいかないが、出場すればフィジカルとテクニックを武器に絶大な存在感を放つ。このペースならセリエAでも20ゴール超えが期待できそうで、さらにその貢献はゴールだけでなく、ポストプレーやラストパスといったチャンスメーク力も高い。現時点ではセリエAのベストプレーヤーと評して構わないだろう。

 そして中盤で多大な貢献を果たすのがケシエ。圧倒的なフィジカルを武器とする逸材がついに本格開花し、ボール奪取から持ち上がりまでしっかりとこなす中盤の番人と化した。トップ下のチャルハノールや同じダブルボランチのべナセルを含め、創造性に欠けるのは否めないが、イブラを基準点とした4-2-3-1がしっかり機能しているため、大きな問題ではないだろう。また逸材トナーリもようやく新天地に慣れ、本領を発揮すれば新たな戦術も目指せるはずだ。

 最終ラインも安定している。20代前半にも関わらずすでに重鎮と言える守護神ドンナルンマを中心に、ベテランのケア、中堅のロマニョーリが固めるCBは盤石そのもの。失点は13と少なくはないが、守備陣に大きな穴があるわけではない。両SBにしても、攻撃力を武器とするテオ、逆サイドでは攻守に奔走するカラブリアが予想以上の働きを見せており充実している。

 

 問題があるとすればイブラの離脱だろう。つい先ほどもイブラのさらなる負傷が発表され、復帰は年明けまでずれ込むことになった。ここまではイブラの欠場した試合もしっかり勝つなど、ポテンシャルはあるだけに、取りこぼしなく走り切れるかは大きな注目だ。

 

 現在2位。宿敵ミランとの勝ち点差は1と、しっかり優勝争いに絡むインテルだが、チャンピオンズリーグは屈辱のグループリーグ敗退を喫するなど、盤石の足取りではない。とはいえ国内では最多30ゴールをたたき込むなど圧巻の強さを誇り、ここまで負けはミラノ・ダービーの接戦のみ。コンテが創り上げた闘争心に溢れる戦う集団は、ここまでしっかりと結果を残している。

 

 チームの絶対的なエースが、ベルギーの大砲ルカク。ここまで11試合に出場して10ゴールと、昨季に続いてエースの役割を全うしている。スピードとパワーを備えた大型ストライカーであり、エリア内に仕事場が限定されていた前エースのイカルディよりも柔軟なプレーが可能。コンビを組むラウタロ・マルティネスとの連携もばっちりで、チームにおける重要度はますます上がっている。

 

 中盤では、新戦力のハキミが最大の発見だ。昨シーズン、ドルトムントで覚醒したウイングバックは、イタリアでも存分にその攻撃力を発揮。右WBのポジションを不動のものとし、チームの攻撃に厚みを加えている。また左WBには、レンタルバックのペリシッチと昨シーズンのレギュラーであるヤングがハイレベルなポジション争いを見せ、両サイドをこなすダルミアンがバックアッパーとして控える。現陣容でもっとも充実しているポジションの1つだろう。

 3センターは、ガリアルディーニ、ブロゾビッチ、ビダル、バレッラの4人をうまく使い分けており、中でも若手屈指のMFであるバレッラは貢献度が高い。フィジカルもテクニックも高水準な、隙のないモダンな万能型であり、これからも重用されるだろう。

 中盤でひとり蚊帳の外なのがエリクセン。序盤戦はエリクセンをトップ下に置く3-4-1-2を採用していたが、縦に速いコンテのサッカーでは上手くいかず、エリクセンに見切りをつけて代名詞である3-5-2に戻した。今後もこのシステムでは出番は厳しいだろう。

 

 最終ラインは新加入のベテラン・コラロフが序盤戦こそ使われたものの、故障や不調にコロナ感染もあって序列は下がり気味。不動のデフライ、ポジションをものにしたバストーニと並ぶのは、最近は再びシュクリニアルに戻ってきた。安定感抜群の守護神ハンダノビッチも含め、まずまず安定したパフォーマンスを見せている。

 

 今後のポイントは、やはりターンオーバーだろうか。幸いFWではサンチェス、MFではセンシやベシーノといったタレントがいるだけに、主力を休ませても取りこぼしが無ければ、十分覇権奪回のチャンスはある。むしろオーナーの資金力を考えれば、冬の市場で戦力を増強して優勝候補の最右翼に躍り出る可能性も十分だ。

 

 長すぎるので区切る。